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dancyu gift 017美食探訪堅実な土づくり、ひと粒ひと粒への情熱……つくり手の志が育んだ梅の力。山深き清流の里、紀州・龍神村へ和歌山県龍神村の梅は、粒も不揃いなら、斑点もある。いわゆる高級梅干しとは一風違うが、ひと粒頬張れば味わいの違いは歴然。身体に染み入るような素材そのものの力強さがある。梅の季節が到来した6月のある日、この梅の里を訪ねた。化学肥料を使わずに育てた梅の実を丁寧に漬け込んだ、龍神自然食品センターの梅干し。 はじめて龍神梅と出会ったのは、風邪で臥せっている時に風邪に効くから、と友人が送ってくれたのが、この梅干しだったのである。 焙じ茶と一緒に食べた梅干しはおいしかった。鮮やかすぎない色合いも、締まった果肉の勢いもある味わいも心地よかった。しょっぱさの中に梅そのもののうまみが、力があった。自然食品という名のもと、味は二の次という無味の梅干しとはまるで異なっていた。以来、龍神梅との付き合いが始まったのである。 以前に梅の花ほころぶ早春に龍神村を訪ねたことがあるので、今回の訪問は2度目である。青梅の収穫がはじまった初夏の 和歌山・白浜空港から車で約1時間。夏の強い陽射しに滴るような万緑の中をひたすら進み、幾重にも重なり連なる山峡を日高川沿いに上がって行くと、上流の源流からさほど離れていない山間に龍神村が広がる。 その昔、役えんのぎょうじゃ行者が大峯山で修行中に難なんだりゅうおう陀龍王が現れ、そのお告げを受けて発見、のちに弘法大師が広めたといわれる村の龍神温泉は、紀州藩主、徳川頼宣公が好んで湯治に通ったことでもよく知られる。 村の95%が森林で、林業が主産業の龍神村には、もうひとつの名物がある。「龍神梅」と呼ばれる、無化学肥料栽培の梅干しだ。

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