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美味探々dancyu gift 051「百姓」という名の山地酪農の先駆者木次乳業相談役 佐藤忠吉神話の国、出雲に誇り高き一人の翁がいる。佐藤忠吉──農業を愛し乳牛を慈しむ。飄々とした風貌と朴訥とした出雲弁で、翁はこの国の酪農について真摯に熱く語った。 頭の上に焦げ茶色の塊たちがうごめいていた。50頭ばかりの牛の群れを仰ぎ見る。そんな体験は、ここ奥出雲にある日ひのぼり登牧場でしかできない。木きすき次乳業直営の牧場である。 飄ひょうひょう々と斜面を登っていった木次乳業・佐藤忠吉さんが、丘の上から声をかけてきた。佐藤さんは88歳(平成20年11月現在)。日本の牛乳を変えようと孤軍奮闘する食の革命家として、その世界では有名人である。 牧場の一角に設けられた事務所で話を訊くことにした。佐藤さんは冷蔵庫から牛乳パックを取り出すと、コップになみなみとついでよこした。「えっ!」という不思議な味覚だった。ふだん知っている牛乳ではない。もっとさらっとして飲みやすい。喉をグングン流れていく感じ木次乳業の乳缶

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