DB
20/88

美食探訪太陽と風の贈り物、「天日干し」の逸品を伊豆・下田に訪ねるいぶし銀の「一夜干し」塩をして干すことで魚の味が凝縮する干物には、何ともいえない独特の旨さがある。特に最近の人気は、ふっくらしっとり仕上げた一夜干し。美味なる天日干しを訪ね、伊豆半島南端の下田に向かった。おいしさの秘密は、朝の太陽と風にあった。 下田に「旨くて安い干物」で知られる「山七商店」の干物づくりが始まる真夜中を待った。満天の星空のもと、午前0時半に「山七商店」の西堀菊代さんを訪ねる。「朝日に干した干物はひと味ちがう。お昼前に店に並べるには、夜中に魚を開いてしまわないと間に合わない」そうだ。 現在、下田で干物をつくっている店は15軒ほど。しかし、天日干しは小数派だ。話をしながらも、西堀さんは手を休めずにどんどん魚を開いていく。あじ、むろあじ、きんめ(金目鯛)の3種を、まずはあじからリズミカルにさばいていく。刃渡り15センチメートルほどの小出刃を魚の腹にあてがい、すっと引いてワタを出し、頭を割る。この間、午前中の太陽を浴びて干される完成間近のむろあじ。日の光と海からの風が魚の旨味を凝縮し、独特の香りやツヤも生まれる。機械でつくる干物とはひと味ちがう出来映えだ。dancyu gift 019

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です